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セミナー&ワークショップ:「中国アニメーションの新世代Liu Jian監督が描く中国社会」

 【刺痛我】は、まったくひとりで製作した長編アニメです。作品の背景は経済が急激に発展した現代の中国です。レイオフされた労働者の張が、生活のために人生を賭ける物語です。この作品は、中国の普通の人々の生活の姿であり、彼らの恋愛や金銭、道徳観など、さまざまな側面を照らし出しています。
 この映画のテーマは、社会生活の中では、あらゆる人が、何らかの事件に巻き込まれ傷つけられるということ、そして、いかなる偶然にも必然性があり、希望と絶望は常に同居しているという人生観です。
 映像の持ち味については、線と色彩を独自の手法で表現したことで、美しくてそして残酷な味わいを演出することができました。また、台詞は直接的ではっきりと表現したため、いっそう暗く暴力的な雰囲気を醸し出すことができたと思います。
 この映画は、現代中国の社会現象を描いています。他の中国のアニメ作品と比較して、よりいっそう明確な文化的立脚点と芸術的な主張が、独特な味わいで斬新な作風を作り上げています。  
 現在、主な中国のアニメ作品は、題材においても、制作意識やスタイルにおいても、こだわりが強く、また直接的に価値観を訴えるような表現手法を用います。
 中国では、ほとんどのアーティストが、下請け的な後工程の作業をしてきたので、美術的な基礎と芸術的な感性に欠けています。また、文化的な立脚点を明確に見出せないため、文化的アイデンティティに乏しいという深刻な問題もあります。
 このような問題の根本的な原因は、中国の現代の文化と教育制度にあると考えています。私見ですが、文化や芸術は、“多様性と自由に表現できること”が、あるべき姿であり、統一され規定されるものではないと考えます。教育は、創造性に富み、自らの自由な意思で、多様な作品を作れる人材を育てるべきで、産業化の中で標準化された定型的な人材を育てるべきではないと考えます。
 【刺痛我】は、個人制作の中国長編アニメ映画として、題材や、制作手法、そして芸術性など、これまでにない新たな可能性に挑戦したいとの思いで制作しました。

 

「劉様の中国語の講演ノート」


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